2014年7月7日月曜日

集団的自衛権「突然」議論されはじめた?地方議会の議論はまだこれから

今月に入り、7月1日に閣議決定された「集団的自衛権の行使容認」に対する関心が急激に高まっているようです。昨年末に可決された特定秘密保護法に対する関心の高まりとは比になりません。

図1はGoogleトレンドで「集団的自衛権」<青>と少し前に議論されていた「特定秘密」<赤>の利用頻度(検索トレンド)を比較した結果です。7月に入ってまだ1週間足らず、にもかかわらずこの異常な伸びは希有なことなのではないですかね。「青天の霹靂」的突然急上昇です。

【図1】「集団的自衛権」<青>と「特定秘密」<赤>の検索トレンドの推移

蛇足ですが「AKB」<オレンジ>すら超えています(詳細はこちらからどうぞ)。

【図2】図1に「AKB」<オレンジ>を追加した検索トレンドの推移

ところで、集団的自衛権の行使容認に対する懸念が、地方議会を席巻していることをご存じでしょうか。政府に慎重な議論を要請する、あるいは反対姿勢を表明する「意見書」を提出する動きが全国各地に広がっているようです。昨年末の特定秘密保護法の可決に際しては「40以上」の意見書が提出され、これでも「異例の数」のようでしたが、今回はこれを大幅に上回る「200以上」の意見書が提出されたようです。


しかしこの動き、実はなかなかよくわかりません。地方議会は市民にとって最も近い議会であるにもかかわらず、報道されることは少なく、よほど注視しなければ動向が見えてこないのです。集団的自衛権の行使容認に対する意見書を出す動きについても同様で、「意見書を提出した(する)地方議会」はわかるのですが、「意見書の提出を見送った地方議会」は一部わかる程度、「議論もしていない地方議会」にいたってはほとんど報道されません。


憲法解釈を180度転換させる非常に重要な決定であるにもかかわらず、これで良いのか…ということで、私が居住している東京都の情勢を調べてみました。調査方法は非常に単純で、Googleのサイト内検索機能(site:)を利用し、各地方議会のサイトを「集団的」もしくは「集団的自衛」で検索、何もヒットしなければ「議決するに至っていない(議論した形跡が見当たらない)」と判断し、何かヒットすれば議決内容をくまなくチェックする、といった手順となります。

「意見書を提出した(する)地方議会」は<青>、「意見書の提出を見送った地方議会」は<赤>、「現在審議中の地方議会」は<黄>、そして「意見書の提出について審議するに至っていない(審議した形跡が見当たらない)議会」は<白>で、それぞれ着色しています。

【図3】集団的自衛権、東京都市区町村議会の審議状況(7月7日現在)

【表1】集団的自衛権、東京都市区町村議会の審議状況(7月7日現在)

上述したとおり、多くの報道では「意見書を提出した(する)地方議会」<青>がフィーチャーされていますが、「意見書の提出を見送った地方議会」<赤>も結構目立つことがわかりますね。23区に限ってみれば、ほとんど審議されていないようです(ほとんど<白>)。これが地方議会の現状、なのですかね。

ちなみに、都道府県議会は図4のような状況です。

【図4】集団的自衛権、都道府県議会の審議状況(7月7日現在)

【表2】集団的自衛権、都道府県議会の審議状況(7月7日現在)

東京都の市区町村議会同様、「意見書の提出を見送った」<赤>がやや多く(12/47)、「現在審議中」<黄>(2/47)、「意見書を提出した(する)」<青>(3/47)、がまだらに存在し、広島県や長崎県をはじめ審議されていない議会<白>(30/47)が多数、というこの状況。議論が成熟している、とは言い難い状況なのではないでしょうか。

なお、「意見書を提出した(する)」<青>のは長野県、岐阜県、沖縄県の3県議会にとどまり、長野県は、市町村レベルでもかなり議論されているようです。


福島県議会は「逆の方向」<紫>で積極的のようですが、県内の市町村は割れていますね。


調べればまだまだ色々なことがわかりそうですが、ひとまずここまで。

本記事にある地図の描画には「白地図ぬりぬり」を利用しました。インタラクティブな地図を作成するのはやはり時間がかかります。私が調査したデータを公開しておきますので、どなたかやっていただけると嬉しいです。間違いの指摘、他の地方議会の審議結果に関する情報の提供も助かります。


それにしても地方議会のサイト、もう少し何とかなりませんかね…

2013年7月22日月曜日

緊急検証―参院選2013、池上無双の嵐は吹き荒れたのか?―

池上無双の嵐、「選挙特番視聴率競争~参院選2013の陣~」でも吹き荒れたようですね。視聴率は民報のなかで「圧勝」と、早速伝えられています。参院選当日は早々に投票を終え、東京選挙区で山本太郎氏の当確が出たときは物見遊山に近所にある選挙事務所へ足を運びましたが、それ以外の時間帯は私も池上特番を視聴していました。




ネットではどうだったのか、気になるところです。おなじみのGoogleトレンドで調べてみました。7月は集計中でまだ「速報」のため正確性は低いのですが、昨年末の衆院選に比べると、意外なことに「惨敗」と言えるほどの落ち込みとなっています(「選挙 NHK」17ポイント、「選挙 朝日」10ポイント、「選挙 毎日」8ポイント、「選挙 Yahoo」32ポイント、「選挙 池上」5ポイント)。


[図1] 検索トレンド対決(Googleトレンドの検索結果、2013年7月22日午後12時現在)


投票率が52.61%と低かったせいでしょうか。ネット選挙報道自体、昨年の衆院選ほど注目されておらず、全体的に低調ですが、「選挙 池上」は特に低調です。来月に改めて確認してみる必要がありますね。

とは言え、池上特番ページのシェア数(注目度)はなかなかのものです。図2は主要な選挙サイトのトップページにおける、フェイスブックシェア数(FBシェア数)、ツイッターツイート数(ツイート数)、はてブ数の伸び(公示日と選挙翌日の差分)を表したものです。


[図2] サイト別シェア数の伸び(公示日と選挙翌日の差分、2013年7月22日午後12時現在)


これを見ると、はてブの伸びはNHK選挙サイトが、FBシェア数とツイート数はYahoo!JAPAN選挙サイトが、それぞれトップとなっていますが、池上特番ページは「ただのぺら一の予告ページ」であるにもかかわらず、FBシェア数ではNHK選挙サイトを上回り、はてブ数も朝日新聞の参院選特設サイト毎日新聞の参院選特設サイトを上回っており、「なかなかのもの」であることがわかります。

さらに池上特番と言えば、定番の「まとめ記事」があります。図3は、衆院選2012での無双ぶりをまとめた記事都議選2012での無双ぶりをまとめた記事、そして今回(参院選2013)の無双ぶりをまとめた記事、それぞれのPVを一覧にしたものですが、参院選での無双ぶりをまとめた記事は桁違いに読まれているのがわかります。もう圧倒的です。(※この記事をアップする前に確認したところ、既に94万PVを超えており、いまなお上昇中)


[図3] 池上彰氏の無双ぶりをまとめた記事のPV(2013年7月22日午後12時現在)


そしてまとめ記事を「池上無双への援軍」として考慮すると、FBシェア数、ツイート数、はてブ数、いずれも全ての選挙特設サイトを抜き去り、「圧勝」となります。


[図4] 池上無双への援軍(2013年7月22日午後12時現在)


参院選2013の陣、池上無双の嵐はネットでも吹き荒れた、そう捉えても差し支えないのではないでしょうか。

ところで、Googleトレンド(図1)においてYahooがNHKを上回り、シェア数の伸び(図2)でもはてブ数以外は1位と、ネット選挙報道におけるYahooのプレゼンスが高まってきているのがわかります。先月の都議選あたりから潮目が変わってきたのかもしれません。

参院選2013、ネット利用動向から見た政党の特徴

ネット選挙活動解禁後初の国政選挙となった参院選2013。ソーシャルメディアに対する取り組みは党ごとにだいぶ異なっていたようですね。代表的なソーシャルメディア、「ブログ」「ツイッター」「フェイスブック」の利用動向を調べてみました。

[図1] 候補者の政党別ソーシャルメディア利用率(議席を保有している政党)

図1は候補者の政党別ソーシャルメディア利用率(議席を保有していた政党)を表しています。これを見ると、自民のフェイスブック利用率(オレンジ)は全体平均の50.6%に比べて20%以上高い75.6%と全政党中最も高く、フェイスブックを利用した情報発信に力を入れようとしていたことがわかります。総裁がフェイスブックを積極的に利用している、その影響があったのかもしれません。

一方、みんな、生活、共産、維新は、ツイッターの利用率が高くなっていました。

このなかで注目したいのは共産です。共産はブログの利用率も高く、ややインナーサークル的な要素があるフェイスブックはあまり利用せず、情報を広く届けようとする意思を感じました。自民とは対照的ですね。

図2(参院選候補者のツイッターアカウント開設数の推移)に示すように、ツイッターアカウントの開設数は2013年に入ってから急増しており、多くの候補者が参院選に合わせ駆け込みでアカウントを開設していました。

[図2] ツイッターアカウント開設数の推移

このようななか、図3に示すように、共産候補者の2013年の開設数は低く、以前からツイッターを利用した情報発信に力を入れていたことがわかります。今回の参院選、共産は議席数を大きく伸ばしましたが、この辺りの取り組みが影響しているのかもしれません。まぁ、ここで言及しているのは「何を使っていたか」であり、「どう使っていたか」を別途調査してみなければ正確なところはわかりませんが。

[図3] 2013年のツイッターアカウントの開設状況

もう一点、気になる傾向があります。無所属の候補者や小さな政党に属している候補者のソーシャルメディア利用率は、大きな政党に属している候補者に比べて、非常に低くなっています。例えば、ブログの利用率。全体平均はおよそ65%ですが、無所属の候補の利用率はおよそ33%、小さな政党に所属する候補の利用率は50%と、いずれも低く抑えられていました。ツイッター利用率、フェイスブック利用率でも同様の傾向となっています。

[図4] 候補者の政党別ソーシャルメディア利用率(その他)

ソーシャルメディアは本来「持たざるも」にとっての武器となるはずですが、残念ながらそうはなっていないようです。ソーシャルメディアの利用をサポートするような組織力の有無が影響しているのかもしれません。正確なところはわかりませんが、財力も影響しているとなると、「ネット選挙活動にはお金がかからない」とは単純には捉えることはできないのかもしれません。

ちなみに、男女別ソーシャルメディアの利用率は図5のようになりました。女性候補者の方がやや利用率が高いですね。

[図5] 候補者の男女別ソーシャルメディア利用率

年代別では、若い世代の利用率が高い傾向がありました。70代も頑張っていますね。

[図6] 候補者の年代別ソーシャルメディア利用率

最後に興味深いファクトを一つ。

ブログを開設している候補者は、全候補者433人のおよそ65%にあたる282人。このうち180人がブログサービスを利用しているのですが(残りの102人はレンタルサーバなどにブログ用のCMSを導入)、その半分以上が、ブロガーでもなく、はてなダイアリーでもなく、Livedoorブログでもない、「アメブロ」を利用していました。その数驚きの96人、利用率にしておよそ53%。2番目に利用されているブログサービスはFC2で22人、3番目に利用されているのはgooブログで10人となっており、アメブロが明らかに突出しているのがわかります。ブログサービスの国内シェアでもわかれば比較してみたいところですが。この業界に精通する後輩が言うには、サイバーエージェントは結構プロモーションしてるらしいのですが、その成果なのですかね。

[図7] 候補者が利用しているブログサービス

ちなみにブログと言えばコメント欄。「候補者は特に炎上を恐れてコメント欄は閉じているんじゃないのかな」などと邪推していましたところ、それほどでもなく、半数以上(全282あるブログのうち、158のブログ)はコメント欄をちゃんと設置していす。対話姿勢はありました。

この記事で利用しているデータをGoogleスプレッドシートにまとめています。よければご活用ください。もし間違いに気付かれましたら、指摘していただけると助かります。