2010年3月23日火曜日

マスコミ企業がソーシャルメディアを使う目的 (前篇)

これまでの数カ月間、企業におけるソーシャルメディアの利用状況を調査、自分でも利用してきました。その間にソーシャルメディアの可能性を肌で感じ、そして、現在のマスコミ業界が抱える数ある問題のうちのいくつかは、ソーシャルメディアを適用する事で解決できる、あるいは解決に近づけることが出来るのでは、と考えるに至りました。そこで、本稿含め2本に分けて私の考えを提示させていただきたいと思います。今回は前篇として私の考えの前提を明確にし、後篇で具体的なソーシャルメディアの利用目的を述べる事とします。

では早速。仮説ベースのためまだまだ議論の余地はありますが、マスコミ業界が抱える問題は概ね次の3点に集約されるものと考えます。
  1. ビジネスの問題
    「購読者(視聴者)が減少してる」「新規開拓が難航を極めている」など。ユーザのニーズ(コンテンツに対するニーズ、提供形式に対するニーズ)にマッチした、あるいはユーザの新たなニーズを創造する新しいサービスが提供できていない。
  2. 経営の問題
    「コスト構造の問題」「組織構造の問題」など。マスメディアからの収益が落ち、今後も改善幅は小さいにも関わらず、高コスト体質となっている。また、デジタルメディアやソーシャルメディアにおいて、大きな収益をもたらすサービスを発明できていない。
  3. 報道倫理の問題
    「押し紙問題」「記者クラブ問題」など。
ここで、本題目では「経営の問題」及び「報道倫理の問題」については一先ず置いておき、まずは「ビジネスの問題」の解決に焦点を当てます。

<注記>
解決すべき問題の設定に誤りがあった場合、以降の議論が無意味なものとなってしまう恐れがあるため、本来であれば上記3点に集約したプロセスをまず先に提示、あるいは議論すべきだとは思います。しかし、このプロセスにはかなりの時間を要してしまうと考え、また、一刻も早く現状を打開する必要があると考え、まずはソーシャルメディアを使う目的の明確化から議論を始めさせていただきたいと思い、このような手段を取らせていただきました。もちろん、問題の設定に対して突っ込みを入れていただいても構いません。なお、各問題の詳細な分析については、後日別の記事を起こしたいと思います。そこで仮に問題設定や以下に述べる解決策に誤りがあった場合は、考えを再構築したいと思います。

さて、「ビジネスの問題」を解決するための施策ですが、これもまた仮説ベースで恐縮ですが、最終的には次の3点に集約できるものと考えます(この点についてもご意見歓迎です)。
  • 魅力的なマッシュアップ型メディアサービスを構築する
  • 全く新しいスキームのサービスを発明する(イノベーションを起こす)
  • その会社のコンテンツが見たくなる雰囲気を作る
各施策分類の詳細については後篇で説明します。なお、「マッシュアップ型メディアサービス」は私の造語で、複数のメディアで展開している単独のサービスを組み合わせたサービス、と捉えて下さい。例えば自社発行新聞と自社ニュースサイト、そして自社Twitterアカウントを組み合わせて一つのサービスを提供する、といったものです。

日本人の情報の摂取方法が多様化した事で、マスコミ企業は「マスメディア」では以前のようにお金を生み出せなくなっています。また、新旧のメディア企業が群雄割拠、ポータルサイトも存在する「デジタルメディア」では、マスコミ企業一社が単独で大きな利益を上げるのは難しい構造となっています。そして「ソーシャルメディア」単独では確たるマネタイズの方式が確立されていません。このように八方塞とも思える状況ではあまりますが、マスコミ企業はソーシャルメディアを利用する事で今直ぐに出来る事が意外とある、というのが後篇の論点です。

因みに、「経営の問題」及び「報道倫理の問題」の解決にもソーシャルメディアは一役買えるのでは、と、考えています。