2012年9月4日火曜日

データジャーナリズム・ワークショップ

去る7月28日にJCEJGLOCOMの共催でデータジャーナリズム・ワークショップ「データジャーナリズム実践 データから社会問題を発見する」を実施しました。開催から少し間があいてしまいましたが、ワークショップのポイントを簡単にまとめておきます。ワークショップ当日の様子については、JCEJのブログにアップされている運営報告をご参照ください。


JCEJが主催するデータジャーナリズムのワークショップは今回で3回目となりますが、いずれの回も満員御礼となったことから、この分野に対する関心の高さが感じられます。国内ではあまり認知されておらず、学ぶ機会が少ない一方で、世界のジャーナリズムの現場ではスタンダードとなりつつある、という差し迫った事情もあるのかもしれません。

さて、座学中心の第1回データジャーナリズムを実践する際に利用するツールを学んだ第2回に続き、第3回の今回はより実践に即したスタイルを目指しました。データジャーナリズムに関する日本語の参考資料が少ないことから、午前の部と午後の部の2部構成とし、午前の部でまずデータジャーナリズムに関する講義を行い、続けて午後の部で実践的なデータジャーナリズムに取り組む、という流れとしました。

午前の部では、データジャーナリズムに欠かすことができないオープンデータの国内最新事情についての講義をGLOCOMの庄司昌彦さんが、そしてデータジャーナリズムの最新動向についての講義を私が、それぞれ担当しました。講義の詳細については、ご参加いただいた山口亮さんによるTogetterが大いに参考となります。


なお、データジャーナリズムの最新動向については、私が使用した資料をSlideShareに、資料を作成する際に参考としたサイトをNAVERまとめに、それぞれアップしておきましたので、併せてご活用ください。




資料中でも触れていますが、データジャーナリズムは「チームで取り組む」こと、「読者目線」、そして「とにかくやってみる」ことが重要です。

データジャーナリズムは「データを活用して発見した事実を分かり易い形式で読者に届ける手段」であるため、データの収集、分析、可視化などのシーンでは、アナリストやエンジニアのスキルが要求されます。そのため、データジャーナリズムの現場ではジャーナリスト、アナリスト、エンジニアがチームを組むのが一般的となっています。また、データジャーナリズムでは、単にデータを可視化しただけの独りよがりはNGで、「読者にとって分かり易いか」「読者が洞察を得る手助けができたか」など読者目線が大きなポイントとなります。

ということで午後の部では、「ジャーナリスト」「アナリスト」「エンジニア」で構成される5名程度の「チーム」を即席で結成してもらい、各チームで「読者目線」のデータジャーナリズム・プロジェクトを、約3時間で企画してもらう、というワークに取り組んでいただきました。各チームでの取り組みについては、GLOCOMのオープンガバメント研究会のブログ、およびJCEJブログに掲載されている記事をご参照ください。全6チーム、6プロジェクトが企画されましたが、いずれも興味深いものばかりでした。


補足ですが、現在、データジャーナリズムの現場では、「テクノロジーの取り込み」と「読者の巻き込み」が進んでいますので、これからデータジャーナリズムに取り組む場合は、これらを考慮すると良いかもしれません。

<テクノロジーの取り込み>
ガーディアンやBBC、NYタイムズ、ProPublicaなど、データジャーナリズムに率先して取り組んでいるメディアは、優秀なエンジニアの採用を加速しています。Googleはデータジャーナリズムに必要なツールを開発したり、データジャーナリズム関連のプロジェクトに出資するなど、データジャーナリズムを強力にバックアップするようになりました。また、米国のジャーナリズムスクールではテクノロジーを学ぶ、あるいはテクノロジーを活用してイノベーションを起こすためのプログラムが導入されはじめました。

<読者の巻き込み>
ユーザの理解を促進する「インタラクションの実装」、「(読者からの)リアクション(コメントなど)の取り込み」、「N次創作(利用したデータを公開し、ユーザに別の視点から調査してもらう)の促進」など、読者を巻き込むことに主眼が置かれるようになってきています。

第4回のワークショップを9月1日に実施したのですが、これについては後日改めてまとめてみたいと思います。